第8話

「おまえには“大切なもの”がねえのか」


腕を捻り上げようとしたらさっきよりも低い声が降ってきた



……ああ、


おまえもそれ、言うのか


一番聞きたくないワードに心が一気に冷える


あーうざい


全部めちゃくちゃにしてえ



『そんなのとっくの昔に消えた』


姿勢を低くし腹にめがけて思いっきり蹴りを入れた



「っ゛!!っ、テメェ…」


『残念だな、おにーさん』


振り返り、暗闇でも分かるよう冷ややかな笑みを浮かべてみせた

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