第93話

妖しい雰囲気をもつ男だな。


……実は気が付いてた。


誰かが後をつけていたことに


3階に着いた時から後をつけられていた


「…――ねえ君、“西山 葉月”ちゃん、だよね?」


手を退かさずに仮面を被ったような笑顔でそう尋ねてきた。


『…そうですが。私になにか?』


私の無機質な返答に一切表情を変えず男は続ける。


「ちょっと付いてきて欲しいんだ」


『嫌です』


即答


誰がアンタに付いていくもんか。


どう見ても嫌な予感しかしない。



「そんなに嫌な顔しないでさ、ね?」


『嫌ったら嫌です。…それにこのあとHRなんで』


肩に置いてあった手を振り払い、その場を後にした。





「うん、あの子だ」


目を細めそう呟いていたのを私は知らない。

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