第21話

私は彼を“ヒデ”と呼んでいる。


『……もうお腹ペコペコ、式長すぎー』


「お疲れ様でした。車内に菓子を用意してるのでよかったら召し上がってください」


『本当?ありがとう』


さすが竜並みに気が利く。


リュックを下ろすとヒデがすかさず受け取ってくれ後頭部座席こうとうぶさせきの扉を開けてくれた。


『ありがと』


お礼を言って車に乗り込んだ。


ヒデはまた笑みを浮かべ扉を丁寧に閉め運転席に乗り込む。


言われた通り運転席の背に紙袋がかかっていた。


中を覗くと私の好きなケーキ屋の焼き菓子たちが。


あ、マカロンもある。しかもお茶も用意されてて最高じゃん。


車が発進し、ちょうどいい音量のBGMが流れる車内でウィッグを外してお菓子を堪能した。


「…え、外しちゃうんすか?」


ヒデがバックミラー越しに見てきた。


『うん?あ、これね。なんか熱いしもういいから』


「そうすか…結構似合ってたんすけど、」


『竜が買って来てくれたんだよ。さすがだよね』


私も違和感なかったもん。


「……そ、そうなんすね(…やっぱ無自覚だなあ)」


そう思いながらヒデは運転に集中したのだった。

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