5.大切な人

第77話

カチン カチン…


時計の針の音だけが鮮明に聞こえる今この場所は、私の実家。


先日の出来事から1週間後の土日で久しぶりに家に帰り、契約恋人をしていた事を母親に打ち明けた所だ。


「……」


気まずい…!お母さん何も言わないし、それに隣に座っている辰巳さんも何も言えないでいる。


「あのね、お母さん…」


「すみません!大切な娘さんにお金で恋人になってほしいと頼んでしまい、本当に申し訳ございません!」


深々と頭を下げる辰巳さん、私もつられて頭を下げるとお母さんは「違うのよ!」と声を発する。


「え?」


私も辰巳さんも顔を上げて、お母さんと向き合う。


「ずっと、茉佑には負担をかけさせてばかりで…今回の事も真緒(弟)の学費や生活費、自分の生活もあるのに貯金崩したり、桜井さんの所でアルバイトしてくれたり…不甲斐ない母親でごめんなさい、茉佑」

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