第74話

「だって桜井さん、こうまでしないと茉佑の事諦めただろ?俺に気を使って」


「いや、まぁ…」


「わかりやすいんだよ。

それに、桜井さんを好きな茉佑と一緒にいてやれるほど俺は優しくない」


新は一瞬悲しそうな顔をした。


「新…」


「茉佑、お袋さんに桜井さんの事ちゃんと紹介しろよ。絶対大丈夫だから」


「うん…ありがとう、新」


「わかったから、さっさと荷物を取って帰りな。

桜井さんの家に」


私は顔を縦に振り、新から鍵を受け取るとエレベーターに急いで乗り込んで荷物を取りに行く。


エレベーターに乗り込むと、鍵を受け取る瞬間に耳打ちされた新の言葉を思い出して呆然とする。


「茉佑の事、ずっと好きだった」


いつから?私は今日まで新の気持ちに気づかなかった…

どんな思いで私の背中を押してくれたの?

いつだって優しくて、昔から甘えてばかりだった。


「ごめん、新…ごめんね」


気持ちに応えられなくてごめんなさい…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る