第56話

「実は…お母さんが怪我して暫く働けないって言ってたからその間までの生活費とか一人暮らし分も併せてたからカツカツの生活してて。

そしたらたまたま事情を知った上司の辰巳さんが婚約者との婚約破棄をする為に恋人のフリをしてほしいと…その間の時給は出すからって」


「え、待て待て。それで生活カツカツだった茉佑は今…この人の家に住んでいるってこと?」


頭を抱えながら新は苦笑いしながら私と辰巳さんを交互に見る。


「うん、そういうこと。

家賃も浮くし、お母さんの怪我が治るまでって約束で」


「はー…」


新は両手で頭を抱え、机に肘をつく。


「なんでお前そんなに危機感とかないの?」


「だって、同じ職場の上司だし」


「はぁ!?ホントにどこまで脳内花畑なんだよ!同じ職場だろうが上司だろうが男だろ!?」

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