第3話


 奏太くんの背中を見送って、私はソファの上に置かれた柴犬のぬいぐるみを抱きしめた。これは奏太くんが私の誕生日にくれた、奏太くんお手製の大事なもの。


 同棲したての時は部屋に置いていたけど、ここに置いておくと奏太くんもこの子を抱っこしてくれる。その姿が見たくて、ここがこの子の居場所になった。


 柴犬のしば子を撫でていると、ふと明日読む予定の手紙を鞄に入れ忘れたことを思い出した。しば子を抱っこしたまま自室に入って、机の引き出しから手紙を取り出した。今度は忘れないうちに鞄に入れる。


 またリビングに戻ろうとして、本棚の上からはみ出している木箱が視界に入った。私の忘れられない記憶を閉じ込めたそれはあまり触れたくないものだけど、落ちてきても危ないからと手に取った。


 そのまま戻そうと思っていたけど、私の心を写すように埃をかぶったそれの蓋を開けてみることにした。


 それは多分、今日だから。


 角が欠けた蓋を開けると昔大好きだった人がよく聞いていたラブソングのサビが、綺麗な金属音を並べて流れ出す。


 オルゴールの横、空いていたスペースに入っていた小さなメモ用紙を開くと『誕生日おめでとう』と、少し昔の、まだ子どもっぽさが残る私の文字で書かれていた。


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