第11話

「そんな事、ないです!

私の方が光輝からたくさん、たくさん…大切なものをいただきました」


泣いてばかりいる私の肩を叩いてくれた光輝のお母様。そんな私たちの前に座ったお父様は初めて口を開く。


「1つ、お願いしたいことがあるんですが、聞いていただけますか?」


「えっ?はい…」


「生きてください。光輝の元へ行こうとか、変なことは絶対に考えず。

アイツの分まで幸せに生きてください。

その方があのバカも…安心すると思うので…」


家の中を見ればわかるほど、生活感のない部屋。

それを見て元警察官だった光輝のお父様はわかったんだ。


私が生きる気力もなくなって、死のうとしていたこともお見通しだったんだ。


「…確かに光輝の元へ行きたいと思っていました。だけど、そうですよね。

私が光輝の所に行ったら彼は、バカヤロー!って突き放しますよね、きっと」


「あのバカ息子は、私に似て口悪くて…

嫌な思いさせてたりしましたよね?」


「そんな事ないです。

でも、やっぱり似てますね!

光輝は警察官になったのはお父様の姿を見て決めたって言ってました。」


「アイツがそんな事を…」


ポロポロと少し涙を流し泣いているお父様を見て、彼が本当に両親にも愛されていた事を実感した。

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