サヨナラの涙

第1話

「ん…」


微妙に空いている隙間のカーテン越しから見えた明るい朝日。

目覚ましが鳴る前に目が覚めてゆっくり起き上がると同時にドアの外から誰かが慌ただしくしている音が聞こえた。


ベッドから降りて寝室のドアを開けるとテレビニュースを流しながら食パンを齧っている彼と目が合う。


「凪咲、起こしちまった?」


「ううん、大丈夫…

今日は早いの?」


どちらかというといつも出勤ギリギリまで寝ていたいはずの彼が早起きをしているものだから少し驚いていた。


「あー…まぁちょっと」


彼は私から目を逸らし、テレビニュースを見ながら朝食を食べる。


「光輝さぁ、何かあるとすぐ頬をかくよね」


「あ"!?」


驚いた彼はパンを皿において慌てて珈琲を飲み、

バツの悪そうな顔をしながら私の方をじっと見る。


「今日、記念日だろ?5年目の」


「え?うん」


「だ、だからたまには定時に上がって外でご飯をとか思ってたりしなくもねぇっていうか…」


今度は頭をかきながら、ぶっきらぼうに答えていく。

思わずその姿に椅子の背もたれを掴みながら吹き出してしまった。


「お前、何笑ってんだよ!!」


「ごめん、光輝。

まさか記念日とか覚えてくれてると思ってなくて、凄く嬉しい!」


「ふ、ふんっ」


光輝はそのまま、恥ずかしいのか顔を逸らして少し拗ねる。



だけどね光輝、本当に嬉しかったの。

不器用で口下手で、でも優しい光輝が大好きだったから…。

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