15. 名ばかりの講習

15-1

歓楽街の裏手に入り、少し歩いたところ。

階段を上がり、男がいかにも裏口って感じの地味なドアを開く。


店のBGMなのか、やかましい音楽が聞こえてくる。

ちょっとうるさくない…?

そう思いながら着いて行くと、事務所らしき部屋があった。



ぱっと見はよくある会議室みたいなのに、周りを見渡すと女の子のコスチュームらしきものが何枚か吊るされている。

風俗雑誌の様なものがあったり、名前の印字されていない空の名刺の様なものがあったり…


いくつかあるパイプ椅子の1つに座る様に言われ、私が腰掛けると、男は言った。



「どれくらい稼ぎたいと?」


『ちょっと見当つかなくて…多いなら多い方がいいですけど…』


「どれくらい頑張れる?」


『めちゃくちゃ頑張ります!』



男の言う「頑張る」の意味が分からなかった私は、言葉通りに受け止めて返事をした。



「身体、張れると?」


『え…?』


「本番までやれるとやったら、うちにはそういう店がないけん、別の店紹介することになるっちゃけど…」


『本番…って…』



もしかして…



「とりあえず…説明するより見てもらった方が早いけん」



そう言って、男はリモコンを手に取った。


私は頷いて、向かいにあるテレビの画面に目を凝らした。

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