13-8
しばらくして、携帯が鳴った。
「引越すってマジやと?明日何時くらい?見送り行くけん!ていうか、なんで別れたと?いろいろ聞きたいことあるっちゃけど!」
友達からのメール。
悠人くんから、聞いたんだろう…
私から言うよりも、そっちの方が早かったか。
『急でゴメンね。時間がまだはっきりせんとよ』
悠人くんと別れたことに関してはスルーして、返信。
電話していい?ってメールが来たけど、今チャリ乗っとうけんあとでかける…と返信した。
他にも何人かから同じ様なメールが来て、それに全て同じ様な返信をした。
SNSのアカウントを全て削除して、私は携帯の電源を切った。
──この子は嘘つきで陰湿。
──お前は周りを不幸にする。
何時間か前に叔父と叔母が言った言葉を、思い出した。
本当にそうだ…この何時間かで、私は一体いくつの嘘をついたんだろう?
特に、悠人くんには。
悠人くんも、友達も、大好きだった。
周りを不幸にしてしまうくらいなら、離れた方がいいに決まってる。
傷付けたかもしれない…ごめんなさい。
でもきっと、これで正しかった。
本当は、全て話して救って欲しかった。
助けてって言いたかったし、彼らならきっと助けてくれたんだろう。
だけど、そういう類のことは結局ひとつもみんなには話せなかったな…
そんなの、付き合ってる意味ない。
友達の意味ない。
理屈では分かっていたけど…何処かにいつも、自分はみんなとは違うっていう、卑屈な気持ちがあった。
だから嫌われたくなくて、少しでもその原因になりそうなことは話せないまま。
知らず知らずのうちに顔色伺って、相手の望む通りに動くことばかり考えていた。
私の過去や本当のことを知ったら、きっとみんな離れていく。
そんな気持ちがいつも消えなくて、幸せだけど怖かった。
いつかそういう日が来るのが、怖かった。
壊れていくのを、見たくなかった。
だから壊れる前に、自分で壊した。
結局私は、見捨てられることに怯える日々から逃げたかっただけなんだ。
初めて、長く乗る電車。
私はバッグを胸に抱えて、目を閉じた。
ガタゴトと、電車が揺れ軋む音。
涙は出なかった。
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