12-6

「どっちが嘘をついとるんか?」



叔父は、大きくため息をついて言った。

私は、黙って叔母の方を見た。


叔母が言った。



「この子、昔から嘘つきやったやない?汚れた下着隠したり、残したご飯をトイレに捨てたり、紗弥加が寝とる間に前髪切ったり…やり方が陰湿やとよね…」



しばらく、沈黙が流れた。

沈黙を破ったのは、叔父だった。



「お前はやっぱり、純子さんの娘なんやな…」



久しぶりに聞いた、母の名前。

私は、叔父の方を見た。



「洋子の姉さんやからと思ってあまり言わんかったけど、俺はお前を引き取ることにはずっと反対やった。いつか何かある気がしとった。思った通りやった」



静かだけど、はっきりした声。

私は叔父がこんなに話すのを、初めて見たかもしれない。

それくらい、普段はあまり喋らない人だった。



「お前が来てから、うちはめちゃくちゃや。紗弥加は進学もせんと出て行くし、洋子は店なんか始めてチャラチャラするし…だから俺は反対したったい…」



それ、私がこの家に来たことと関係あるの?

私が来なきゃ、そうならなかったの?





「お前は、周りを不幸にする」





叔父の言葉が、胸に突き刺さった。


その後は、誰も一言も喋らなかった。

私はしばらく動けなかった。


だいぶ前に、自分の生い立ちを叔母に聞いた時のことを思い出した。





───だから生まない方がいいって言うたとに───





私は、ヨロヨロと立ち上がった。

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