01. 捨てられた私

01-1

『じゃあまた明日ね!』



友達に手を振ってから、鍵を開けて家に入る。

迎えてくれるのは、ダイニングテーブルの上に無造作に置かれた数枚のお札。


ホッとする反面、今日もまた1人なんだなと淋しくなる。



ランドセルを置いた私は、そのお札を財布にしまい、コンビニに向かった。

なるべくたくさん入っているお弁当と安い紙パックのお茶を買って、うちに帰る。



お弁当は半分に分けて、半分は冷蔵庫へ。

そして残りの半分をレンジで温めて、テレビを見ながら食べた。

残りは、明日の朝ごはん。


そして翌朝また学校に行くまでは、ほぼずっと1人だった。



小学生の分際で、友達はみんなそれなりにオシャレ。

こんな田舎なのに、子供の付き合いにもそれなりに小銭がかかる。

お小遣いのない私は、だんだん皆と遊ぶことから足が遠のいた。


それでも皆、学校ではそれなりに仲良くしてくれた。

表面だけかもしれないけど…



自由になるお金は、もしかしたら同年代の他の子たちよりは持っていたかもしれない。


でもテーブルの上のあのお金は、私にとっては「ごはんを買うお金」だった。

なくなったらごはんが食べられなくなる…そう思ったら、食事以外のことに使うのが怖かった。


いつ置かれなくなる日が来るか、見当がつかなかったから。



友達がみんな持ってたたれぱんだのグッズ、私はひとつも持ってなかった。

仲良しの子が分けてくれた便箋と封筒のワンセットを、宝物みたいに大事に大事にしていた。


たまごっちが欲しかった。

ロッテのトッポが食べてみたかった。



だけど小学生の私は、お弁当とお茶以外にそのお金を使うことをしなかった。

そのおかげか、今も貯金と節約は得意な方かも。



あの人に、感謝すべきだろうか。

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