1.チャコールグレイの不安
朝の群青家はいつも慌ただしい。
「ちょっと! みつ、洗面使ってないで早くどいて!」
「はあ? うるせえ。こっちは忙しいんだよ」
「アンタはオトコでしょー?! わたしはオンナノコ! 寝癖直さなきゃ学校いけない!」
「寝癖なんか直さなくても変わんねーからそのままいけよ」
必死に手櫛で髪を整えながら、堂々と洗面の前に立ちはだかるみつのことをこれでもかと睨みつける。けれど毎朝、この私の威嚇はなんの役にも立たない。
「コラ、みつ!あおちゃんのこといじめないの!」
私たちの言い合いが聞こえたのか、キッチンから牛乳片手にやってきたお母さんが、パシッと一発みつの頭を叩いた。
私がそれにクスッとわらうと、みつがうざったそうに私を睨む。お母さんは呆れて肩をすくめるし、後ろからお父さんまでやってきて、「ほんとに、高校生にもなって仲がいいんだか悪いんだか」なーんてため息をこぼす始末。
私はそんな3人を洗面所の外へ追いやってやる。年頃の娘が毎朝髪型を気にするなんて当たり前。
扉に向かって舌を出すと、それに気づいたみつがまた睨みをきかせてくる。なんて生意気な弟だ、ばあか!
ミントブルーの純情 洋梨 @goodbye_blues
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