噂話

第1話

「南さん、いらっしゃいませ」



「弥生ちゃんこんにちは、いつものシャンプーを2本ちょうだい」




――ここは小さなデパート。



その1階に、テナントとして入っている化粧品メーカーに、私は勤めている。



まぁまぁ有名な、化粧品会社の美容部員である。 



『南さん』はここの会員様で、2年ぐらい前にふらっとやって来て、会員になってくれた。



66歳とは思えないほど背筋が伸び、煌びやかである。



買う物はいつも決まったシャンプーで、それは、頭の皮脂や汗、整髪料をすっきり洗い落としてくれる高価なシャンプーで、



いろんなお客様に勧めても、簡単には売れない商品なのだが、南さんはカタログを指差し、あっさり買ってくれた。



もう少し安くて、南さんにおすすめのシャンプーを、勧めた事があったが、


南さんは『これでいい』と言い、2年間そのシャンプーを買い続けた。



そしてなぜか、私がいる時にしか買いに来ない。



先輩の話だと、私が休みだと買わずに帰るらしい。



売上ノルマも、なかなか達成できない私にとって、売上に貢献してくれる南さんは、神様みたいな存在だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る