第89話

みるくはナツキの話にじっと耳を傾けた。



「人魚姫は結局、王子様に想いを知ってもらうことすらできずに、泡になって消えてしまうの。悲しい結末。」




「人魚姫…可哀相。」




「そうだね。結末は置いといても、違う世界から人間になったっていうのは似てない?」




「似てる。みるく、人魚姫だ。」




駅ビルを歩き回っていた二人は本屋で立ち止まり、絵本の棚から人魚姫を取り出して見た。


表紙には、ステンドグラスのような彩りの水彩画で、キラキラした海と、美しい人魚姫の姿が描かれていた。



「これが人魚姫…」



「このおとぎ話、小さい頃大好きでさ、読書する方じゃなかったけど、人魚姫だけは何回も読み返したよ。」




ナツキの横で、みるくは真剣な顔をして物語りを読破した。



「な!?あ、あんたまた泣いてんの?」



ナツキはみるくの頬を涙が流れているのを見てビビった。



「王子様のこと大好きなのに…消えちゃうなんて…酷いよ。」



「みるく…」

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