第3話
その坊主の言葉でみるくの静かな瞳が、まるで感情を持つかのように焔を宿した。
「雌牛みるくよ。
あなたがどんな因果を持ち、その姿で生まれてこなければならなかったのか、私は知っています。あなたが、本当はどんな姿をしているのかも、私は知っていますよ」
坊主は意味深に言う。
「…今は、私しか他に知る者はいませんが。
選ぶのはあなたです。
人の心を持ちながら雌牛として生涯を終えるのか、
それとも、代価を払い人の姿を手に入れるかを」
坊主はたすき掛けした使い古した布袋の中からいっぺんの曇りもない透明な水晶玉を取り出した。
みるくの瞳に映ったその水晶玉は、吸い込まれてしまいそうなほど透き通っていた。
みるくは思い出していた。ジローの言った言葉を。
『なぁ、みるくよぉ。俺って、なんで、彼女ができねぇんだろ。』
みるくの中で、ジローの言葉がこだまする。
「さぁ、この水晶玉はあなたの望むままに現世を変えてくれます。決断の時ですよ」
坊主はみるくに水晶玉を差し出した。
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