第1章・超越♥愛

①Pack・愛は全ての壁をぶっとばす

第1話

ある日、

牧場の一人息子が、牛にむかって憂鬱な顔をしてつぶやいた。



『なぁ、みるくよぉ。俺って、なんで、彼女ができねぇんだろ』



小さい頃から世話をしてきてすっかり情の移ったこの雌牛は、少年にとって唯一の異性の友達だった。

なんと悲惨なことよ。

齢十七にして女の子と付き合ったことはおろか、手をつないだこともないのだ。そのうえ友人が、女は女でも『牛』なのだ。


そんな少年を見て人は言う、

曰く、不憫である、と。



まぁ、そんなかんじに、この少年・ジローの朝が始まる。

my牛・みるくに餌を与え終えると、まもなく、男友達のタケルが自慢のバイクで迎えにきた。


今日も公道をバイクで走りまわるのだ。

少年達には、それしかやることがなかった。


「んじゃ、行ってくるな」

雌牛みるくは、変わらぬ静かな瞳でジローを見送った。

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