第45話
私は息子に謝りたい事がある。
あれは息子が、小学3年生の頃だった。
車で買い物に出かけ、家に帰ると、息子がジャンバーを着ていないのに気がついた。
買ったばかりのブランドのジャンバーで、
私はどこに忘れたのか聞いた。
でも息子は「分からない。覚えていない」と言い、
再び、30分かけて車を走らせ、買い物した店をひとつずつ回り、探した。
しかしジャンバーは見つからず、
息子は「また買えばいい」って笑って言った。
私はその時、頭にきて、
「あなたが、お店の人に『落とし物ありませんか?』って聞いて来なさい」
と強く言った。
息子は人見知りで、『嫌だ』と言ったが、私は、二度と落とし物をしないように戒めようと思い、
「悪いのは、落とした侑だよ。早く行きなさい」
と、息子を1人で行かせた。
そして戻ってきた息子は、泣いていた。
「無かった。ごめんなさい」と怯えるように話した。
その時私は、自分がいじめの様な態度をとってしまった事に気が付いた。
すごく心が痛んだ。
でも、その時私は、息子に謝らなかった。
いつか大人になった時、この経験は役に立つと思ったし、いつか笑い話として、話せたらいいなぁ〜とも考えた。
いつでも謝れる……
そう思っていた。
でも、もう息子はいなくて、私の心には深く後悔が残った。
今でも、息子の泣き顔が目に浮かび、
思わず『ごめんなさい』と、独り言を言ってしまう。
あの時、抱きしめて、謝っていれば良かった。
あの時一緒に、お店の人に聞きに行ってあげれば良かった。
謝れない私は……ずっと苦しみながら生きている。
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