第16話

病院を出て、タクシーに乗った。


松葉杖での乗車は、運転手さんが荷物を持ってくれて、なんとか乗れたが、


降りる時は、もっと大変だろうなぁって思い、


支払いのお金をすぐ渡せるよう、大体の金額を手に握っていた。



しかし、アパートに繋がる細い道が渋滞し、タクシーは動かなくなった。



「お客さん、事故らしいですよ。どうしますか?」



運転手さんは、無線で情報を得て、私に伝えた。



渋滞を待つのも嫌だし、別ルートで帰れば、遠回りになる。


せっかく手に握ったお金では足りない。



だから私は、



「なら、あそこの空き地で降ろしてもらっていいですか?」



と、車が停めやすそうな場所を示した。



運転手さんは車をバックさせ、その場所に移動すると、



「大丈夫かい?歩けるかい?」と心配してくれ、降りるのを手伝ってくれた。



私は、「大丈夫です」と、タクシーを降りたのだが、



雨に濡れながらの松葉杖姿は、すれ違う人に可哀想な目で見られ、不憫で、見窄らしくて、



正直、辛かった。




助けてくれる家族がいたらなぁ……



そんな事を考えていると、頭の上に影ができた。



後ろを振り向くと、侑くんがいて私に傘をさしてくれていて、私は驚いた。



「侑くん…ど、どうしたの?」



彼に話しかけたのだが、彼は私の足元をじっと見つめ、目を合わせないし何も答えない。



「侑くん、聞こえてる?」



やっとこっちを向いたと思ったら、瞬きを何度も繰り返して、言葉になっていない言葉を話した。



「え、え、あ、あ、さ、沙、あし、け、け、…あ、あ、」




「驚かせちゃったね。大丈夫だから心配しないでね」



「ご、ご、ご、ごめんなさい……僕のせい…ごめんなさい…ごめんなさい」



彼は何度も何度も頭を下げ、謝ってきた。


雨に濡れながら、一生懸命謝る姿を見て、私は胸が傷んだ。



「大した怪我でもないのに、ギプスだなんて、大げさなのよ。痛くないよ。ほら、大丈夫」




私は彼を安心させようと思い、足を蹴り上げて見せた。



するとサンダルは脱げ、空高く飛び、地面に落ち、


彼は笑いもせず、無表情でサンダルを眺めていた。



私はドジな自分が恥ずかしくなり、それを誤魔化すために、



「サンダル、上向いているから、明日は晴れだね♪」と言った。



そしたら……奇跡が起きた。



「ハハハ。ハハハ。ハハ、ハハハ」



笑わない彼が、私の冗談で、声を出して笑ってくれた。



初めて見る彼の笑顔は、素敵だった。



かっこいいって思えた。

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