《彩り》

 


俺は彼女に何も求めなかった。


ただいるだけでもよかった。それは捨て猫を拾った時のよう。



だけど、彼女は仕事を求めた。


自分がそこにいる理由が欲しかったのかもしれない。



だから家事全般を彼女に任せた。


それで遠慮がなくなればいいと思った。




彼女のおかげで家はいつも片付いていたし、洗濯が溜まることもなくなった。


いつもシワのないシャツを着て会社に行けた。


苦手だと言いながら、料理も頑張って作ってくれた。


栄養が偏らないようにと考えられた食事は、外食かコンビニばかりの俺には有難かった。



しかも、節約も考えてくれていたらしく、1人の時よりも食費にかかるお金が減った。




彼女の働きは、もう給料を払ってもいい、むしろ払わなくては申し訳ないと思えるほどだった。

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