第21話
「んー…。部屋でお留守番してて、だって」
「またですか?」
「うん」
いつもの事だ。
指示された内容をリリィに伝えると、彼女は普段とは違い「ん、もうっ」と腹立たしげに手を握り締めた。
拗ねてる。
拗ねリリィだ。
珍しい。
「どうしたの?」
「エマ様。私、何だか納得出来ません。旦那様の奥様はエマ様なのに」
「しょうがないよ」
「でも〜」
納得のいかない表情を浮かべ、リリィはおかしいと私に向かってブツブツ呟く。
どうやら、ずっと不満に思っていたらしい。
どうして私が遠慮するのか不思議で仕方ないと言われた。
だけど、曖昧に笑うことしか出来ない。
リリィは私がそういう契約で侯爵様と結婚したとは知らないから。
「まぁまぁ。時間が解決してくれるって」
「エマ様ったら」
「優しいね、リリィは」
不満そうなリリィを宥めて、引き出しの中から個包装された洋菓子を取り出す。
お土産で貰ったそれは珍しいもので、ここらではなかなか手に入らない。
しかも、かなり美味しい物。
一緒に食べようと言うと不満気だったリリィも「いいんですか?」と、パッと嬉しそうに顔を輝かせた。
うん。やっぱりリリィは笑顔が1番だ。
可愛い。
「美味しい〜」
「ね」
1つ違う顔を見せてくれたリリィに何だか嬉しいような複雑なような気分になりながら、寂しくなくなった部屋の中、一緒にお菓子を食べた。
部屋の外で楽しそうに話す侯爵様と本物の声を聞きながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます