第1話

朝テレビのスイッチを入れると、ニュースキャスターが「おはようございます。世界の終わりまであと七日になりました」と言う。


 ここ最近恒例となってしまったカウントダウン。最早何の感慨もわかず、私はいつものようにリモコンをそこらに放り投げた。コーヒーメーカーの電源を入れて準備ができるのを待つ間、見るともなしにニュースの流す情報を聞いていた。


「三週間前に発表されたAIによる予定表は全て遅滞なく進行しています。昨日は第856地区までの“洗浄”処理が完了し、一体が封鎖されました。本日も予定通り第1000番地区までの作業が完了となる見込みであり……」


 第856地区。と言うと、ここからそれなりに近い。以前はちょうど渋谷区と呼ばれていた地区。そして今日の“洗浄”対象エリアには私の居住区も含まれている。東京都杉並区、とかつては呼ばれていた地域。都心からは外れた、しかし住みよい街並みを残した愛すべき故郷。しかし今日を境に人間はいなくなると言う。一人残らず。


 それがAIの出した合理的な結論。人類は、生存に向いていないらしい。

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