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「…ありがとう」



バイクから降りてヘルメットを戸塚洸大に渡す。



「ん」



私からヘルメットを受け取ると適当にかけて、みんながいる方へ歩き出した。




私はその後ろ姿をぼんやりと見ながら、いつもとは違う空気を感じていた。



いつも、車から降りたとたんに向けられる視線。


次々と挨拶とかの言葉が投げかけられる。



けれど、今日はみんな個人個人好きなことをやっているまま、視線が集まることはない。



それは当然ここに総長様も雅人もいないから。



集まる視線もかけられる言葉も全部、私じゃなくて総長様と雅人に向けられたものだということは、重々承知している。



ただ、改めて彼らの凄さを感じた。



そんな彼らといつも一緒にいる私。



私はただ『いろ』と言われてるから一緒にいるだけ。


けれど、それは炎雷のみんなや炎雷に憧れている人からしたら、羨ましいこと。



それなのに、当たり前のように彼らの乗る車に乗って、限られた人しか入れない部屋に入って、当たり前のように彼らと一緒にいる私は、いったい何様なんだろう?




前に戸塚洸大に言われたことも納得できる。



ここにいるみんなも、本心ではそう思っているのだろうか?



……そう思われていても仕方がない。



私はどう思われていてもいいけれど、私が来るたび不快な思いをさせているのだとしたら、それは申し訳なく思う。

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