P.192

「はい」



戸塚洸大が差し出したヘルメットを反射的に受け取る。



だけど、私はヘルメットを持ったまま、動かない。



「ほら、早く乗れよ」



戸塚洸大は少し小首を傾げてから、催促するようにそう言った。



いや、早く乗れと言われても…




「……バイク、乗ったことない」


「あ?んじゃ、これが初めてか?」


「うん」


「あー…うーん、まぁいいか」



戸塚洸大は何やらぶつぶつと独り言を言うと、「大丈夫っしょ」と一人納得したように呟いた。



「何が?」


「いや、なんでもねぇよ。とりあえずここ乗れって」


「わかった」



よくわからないけれど、私は言われたまま初めてのバイクに乗り、ヘルメットをかぶった。




「…ねぇ、どこ掴めばいいの?」


「あ?俺の腰に手ぇ回せ」


「…そこ以外にないの?」


「んーねぇな~」


「……そう」



そう言って、私は言われた通り戸塚洸大の腰に手をまわした。



戸塚洸大の身体は、見た目は細身なのに意外と筋肉質で、ガッチリしていた。

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