第80話

「ユッキー」



「里恵子、お兄ちゃんはもういいの?」




里恵子を部屋の中に入れてベッドに座る。




何となく結果は分かってたけど聞いた。



里恵子は床の上に座ってため息混じりに髪を掻きあげる。




「今日も…逃げられてしまったわ」



「お兄ちゃん…。また、逃げたんだ」




やっぱり……。



お兄ちゃんは里恵子の行為がエスカレートして来ると毎回外に逃げる。



それこそ、本気のダッシュ逃げで。




「こうしてる間にも裕也さんに彼女が出来てしまったら……?」




嫌な妄想をしてしまったのか、里恵子は瞼を手で覆って悩ましげに頭をふるふると横に振る。



お兄ちゃんに彼女って。




「ないない。絶対ない」




悩める里恵子にキッパリ言い放つ。




冴えないお兄ちゃんに惚れてる物好きは里恵子ぐらいだよ。




お兄ちゃん=彼女がいない




の方程式だって成り立つよ。

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