第59話
複雑そうな顔をする涼の目を真っ直ぐ見つめて手をギュっと握り締める。
涼を失ってしまうくらいなら……。
「……抱いて欲しいの……」
「……は?」
言った瞬間、涼は驚いた声を上げてそのまま口を結んだ。
私の目を真っ直ぐ見つめたまま、何も言わない。
そんな態度に不安になって、涼の頬にそっと指を這わせる。
嫌われちゃったかな、って。
「本気で言ってるの…?」
「……うん」
涼は頬に触れていた私の手を掴むと掠れた声で私に聞いてきた。
小さく頷いて、揺れる涼の瞳を上から覗く。
失ってしまうくらいなら……
体だけの関係でもいい。
涼に愛されたい。
例えそれが偽りの愛でも。
でも、涼は“いいよ”と頷いてくれなくて。
暫く沈黙が続いた後、ふと私から目を逸らした。
「ダメだよ……」
そう言って涼は目をそっと閉じる。
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