第8話

「ではくれぐれもお気を付けて」


ファハド達はハラハラ顔の国王夫妻や沢山の大臣や侍従、殆ど全員と言って良い王宮勤めの家臣や召使い達総出の見送りの中、再び休む間もなく旅立ちました



「あなた方が目指す村は自身の故郷です」

そんな最も土地勘のある、信頼が置ける心強いベテランガイドの案内の元、道なき道を進みいよいよ険しさを増す高山森林限界値を越えてゆきます。


ここを過ぎれば山肌には背の高い木々は一本も見られなくなり、岩肌を這う様な驚くほど背の低い植物が所々、時折目に付くのみになります。


ただでさえも空気が薄いのにも関わらず乾燥、更に取り巻く標高が高くなった事により呼吸がつらく体がズッシリ、いちだんと重く感じられる様になりました。


おまけに両側とも目も眩む高き崖、逃げ場の無い危険な落石地帯も抜けなければなりません。

ガイドの素速い体を張った制止で、ふたりは不意な風化した岩石の落下を辛くもやり過ごしました。

目の前を勢いをつけてゴロゴロ転がる、当たったら確実に死んでしまうサイズの岩岩に幾度もゾォッと肝を冷やしました。

道端には白骨化した大型の獣やら何やらが悲しいムクロをさらしております。


いつ亡くなってもおかしくは無い恐怖の中、命懸けで難所を渡りきりました。


そんな中、三人と一羽は稜線に連なる峠を幾つも過ぎ、とうとうガレ場の山肌にへばり付くように造られた山村にようやく到着です。


既に日は傾いておりました。

大変に厳しいルートの登攀トウハンに、幾ら体力自慢のファハドといえど疲労困憊です。



「ではわたくしは、村長に到来の挨拶をしに行って参ります。


新しい、ここでのあらたな案内役をお願いしようと考えております故、それまで我が実家であるこちらで逗留、尊きお体をお休め下さい。


既に大気が酷く薄いので、ここよりも高き場所に上がるには安全と健康の為、必ずお体を一晩ならさなくてはなりませぬ」


「すまぬ、いらぬ手数をかける」

「!!勿体のうお言葉にございます」


恐縮しきりのガイドの青年が恭しく、静々礼の姿勢を取りました。


ガイド役の彼が、自身の実家〜

質素であるものの心地よい、滞在者が居心地の良きよう整えられた住居から退出すると、ファハドは一人でブラリ気楽に庭先に出ようと試みます


「!!危のうございます坊ちゃま!」


「では皆で新鮮な空気を吸おうではないか?」



二人と一羽は未だ旅の装束を解いてはおらず、ですから全員で気軽に外に出ました。


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