十章

カナコの懺悔

第48話

SIDEカシ

一か月後、私はアスナロと一緒にカナコを見つける。

抵抗せず捕まり、カナコは「私、娘にひどいことをしてしまった」と後悔してるという。

「私と会いたくなくないならそれでいいし、許すことが出来ないなら私はそれだけのことをしたと思ってるの。だけどせめてあの子にこれを渡してほしい」と彼女は着物を渡す。

これはというと、「これはマツが成人式にタツキに着てほしいと作った着物なの、それと私宛に手紙が入ってたの」とカナコが言う。アスナロが手紙の内容はと聞く。「カナコ。俺はお前と結婚したことを後悔していない。それは、お前がタツキという存在を生んでくれたからだ。カナコ、お前には辛い思いをさせた、お前はタツキの前に生まれてくるはずだった子供を流産してしまって俺はお前にとんでもない仕打ちをしてしまったんだな。世間の偏見をお前にぶつけてしまった。お前は変わってしまったのはすべて俺のせいだ。タツキには愛してるということを伝えておくが、お前には手紙で残す。俺は世界で一番お前の事を愛してる。お前のすべてが好きだ。お前が産んでくれた樹の事頼んだぞ。多分この手紙を読むとき、タツキが幸せになってると願って」と書いてあった。

「私は母親のすることじゃないことをしてしまった。人間の扱いじゃないようなことも。命をもって償おうとしたけどそれが出来なかった」と声を詰まらせる。「生きてることが辛い」と泣き始めた。その時だった。「お母さん死ぬなんてぜったいにダメ。許さない。私の過去の事はもういい、たしかに寂しかった。私を外に出してくれないなんて、そして売るってことを聞いたときは悲しかった。でも私お母さんを恨んでない。だから死ぬなんていわずに生きてて。」とツバキと一緒に車に乗っていたタツキが出てきた。

「タツキ、ゴメンね」というと彼女は泣き崩れてしまった。

「アパートにお母さんを」というタツキの声で、私は「かしこまりました」というとカナコを連れていく。

すっかりカナコは憔悴しきっているので私が。

「これ覚えてますか?」と聞く。それは薄皮饅頭だった。

「薄皮饅頭だわ。それって私が好物だったもの」

マツは本当は羊羹が好物だったんですけど、ある日、仕事をしてる時に私に薄皮饅頭を買ってきてほしいとお願いしてきたんですよ。「薄皮饅頭ですか。いいですけどどうして」って聞くと、「カナコの好物なんだよね。カナコに買ってやりたくてね。だから自分でも味見する」って言ってましたよ。自分の好物じゃなくても愛する人の好物ならって喜んで食べてましたよ」という。

「元からマツはあなたが恋しくてしかたなかったんです。それを言葉にできなかっただけで不器用な男でしたからね」というと「ごめんなさい、あなた。私も好きだった」と泣きながら言ったのだった。

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