第47話

「え」


食わしてって。


門口は、私のジェノベーゼをフォークで一巻き分取ると、いいとも言ってないのにパクりと口に頬張った。



「あ、見た目と違う。エグくない」



そして、とても満足そうな顔をする。


その顔、ペコが茹でたブロッコリーを初めてたべた時の顔に似ている。



「……ふ、犬か」



思わず吹き出して下を向いた。




「は?、普通、そこ ″子供か″ だろ? 何だよ犬って」



顔を少し赤くして笑う門口は、ちょっとだけ可愛い。



「ほら、お前も食えよ。ミートソース」


そして、自分のフォークで巻き付けたそれを、私の前につき出す。



え、



それ、


間接キスよりも親近ですけど?!




「お前、トマトアレルギーとかじゃないんだろ?」


「そうだけど、でも」


「さっさと食えよ」



せっかちな表情に変わった門口に負けて、仕方なくそれをパクっと口にする。




「……うまい?」




もう、ドキドキなんてしないと思ってたのに。




「は、い。……トマトと、バジルの味が混ざって絶妙で」



性悪なはずの社長に、トキメキを覚えてしまった。

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