第39話

試着して二人の前に御披露目すると、


京子が、

「ホントに似合うわ、そのドレス! 真樹とは思えない!上品!」


ベタ誉めしてくれるので照れ臭かった。



「それにお決めになります? リーズナブルなので是非このブラックフォーマルもご一緒に……」


「いりません!」



懲りずにオバサンスーツを売り付けようとする店員に、



「これでそれも精算して」


門口はドレスと着けていたパールのネックレスを指してカードを差し出していた。


え?


買ってくれる気?



「そんな、いいです!」



なに、このひと。


ドケチな性悪社長かと思ったのに、そうじゃないの?



「大したモンじゃねぇし。それに、これは貸しだから」



「貸し?」


意味がわからない。




「京子さんでしたっけ? ちょっと森山さんをお借りしてもいいですか? 」



「はいっ?!」


門口は、タクシー券らしきものを京子に渡し、


「どーぞどーぞ」と手を振る京子に会釈して、ドレスを着たままの私の手を掴んで店を出る。



「こんな格好のままどこに連れて行く気なんですかっ?!」



なによ、これ?



映画?!


恋愛ドラマのワンシーン?!




「俺も用事があるって言ったじゃん、それに付き合えよ」



だから、それはどこ??




「お前は黙って頷いてればいいから」





ーーこの人の貸しはデカそうで怖い。

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