第14話

コンコン!


「失礼します」


返事はなかったものの、数秒おいて、珈琲をのせたトレイを片手に会議室のドアを開ける。




眼鏡をかけ、ノートパソコンを見つめるその社長の顔は良く見なかった。



「……どうぞ」



知的な横顔は、確かに若そうだったけど。




そして、珈琲を置いて一礼して出ていこうとしたその時ーーー






「客にお茶出すのが遅い、アクセスリースの接客対応はこんなもんか」




どこかで聞いたような声が私の耳を貫く。



「も、申し訳……」


慌てて顔を上げて謝罪しようとしたのに、言葉を思わず飲んでしまった。




「え?」




「マナーが身に付いてないのはオフィスでも同じか」




嫌な言い方をするそのイケメン、




「な? 豆柴のオーナーさん」




散歩中に出くわした、あの性悪男だった。

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