第73話

美空ちゃんには血のつながりはないってこと分かったから、あの顔をしたんだろうな。確かに由夏は僕たちの子供ではないが、多紀さんに養子縁組を希望しているという子供を見たとき、由夏は完全に閉ざしていたもんね。だけどここまでになるまで由夏は自分で頑張ってきた。自殺をしようとした両親。それを止めた娘。その娘を養子にしたいって言って僕たちが選ばれた。でも由夏はすごくやりやすい子で、幼いながらに南の足の不自由なことを感じ取っていた。僕も身体が弱いということが由夏は分かっていたからもし何かあった時は由夏がいつも駆け寄ってきて何か出来ることあるかっていってたな。そんな由夏は今二十歳になった。先日、由夏は自分の生みの母に会いたいって言って多紀さんと一緒に一日だけ会いに行ったっけ。そんで由夏は何かを吹っ切ったような顔で帰ってきた。しかも笑顔だった。そんな由夏を見て僕は由夏を育ててよかったと思った。数日後、由夏の母親からの手紙が来た。私たちも何とか落ち着いてきたのですが、先日由夏に会せていただいてありがとうございます。私は当初自分の事に精一杯で由夏を育てていくことができませんでした。それをしかも障がいを持つ方が育てるということは出来ないと思っていました。でも違ってました。由夏を育てたのは裕福さでもなんでもなくお二人の愛情だと思いました。それが分かったのは由夏が先日私たちに成人だからと着物姿を見せてもらった時です。あの着物は南さんがいつか子供が出来たときに着せるといい持っていてくれた着物だと聞き、本当に由夏に似合っておりました。由夏は本当によく笑っていて笑うのが似合ってるなと思いました。私は由夏に苦労させたと思っておりましたが、由夏から聞いてやっぱり愛情いっぱい育ってるなと思いました。由夏はこういったんです。もうお父さんとお母さんが元気でやってるならそれだけが知れてよかった。でもどっちが大切かと言ったら由夏の思いは安井家なのというんです。私たちを選んでくれなかった。でもそれは由夏の思いならそちらが時間をかけ愛情たっぷりに育ててくれたからだと思います。私たちは由夏が幸せにしてるならそれでいいと思っています。本当にくれぐれも体調等を崩さないようになさってください。とのことだった。

由夏はそう思ってくれてるんだ。本当に。大切だと。嬉しかった。そして、思わず僕ら夫婦は由夏の所に駆け寄り抱きしめた。

由夏は僕たちが抱きしめている間、こういった。どうしたの。どこか痛いのって。ごめん。由夏そうじゃないよ。育ってくれてありがとう。いい娘に。そういう。

お父さんとお母さんといつも、これからも頑張っていこうねというと、しばらく抱きしめているのだった。

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