第344話
「……何か?」
玲衣がそう呟いた後に、美弥は彼に告げる。
口端を上げたまま。
「お前は言わねえの?」
「……何をです?」
「分かってるくせに言わせんのは、どうかと思うけどな。」
「あれ?先生、知らなかったんですか?俺が腹黒くて、最低な人間だってこと。」
「……自分で言うか。」
美弥は玲衣のその最低で腹黒いところに一種の恐怖を覚えながらも、彼の次の言葉を待つ。
辺りには雲が太陽を覆っているせいか、少し暗い。
玲衣の表情が見たくても、見えない。
ジッの彼を見ていると、玲衣はやっとのことで口を開いた。
「簡単に叶う恋なんて、いらないんですよ。」
“少なくとも、俺にはね”
そう呟いた後に、雲に隠れていた太陽が顔を出し始め…───
玲衣の顔を照らした。
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