第89話
何も、考えないで、いい。
「んで、空気になれる。」
空気?
「何も考えたくない時とか、悩んでいる時に空気になれんだよ。こりゃまた、便利でね~。」
悩んでいる時に、空気になれる?
「それは、…どういう、意味、です、か?」
「お、それはな、そん時だけでも冷静になれるっつーことだ。」
その言葉が何故か、妙に魅力的に聞こえた。
今、自分が全く冷静じゃないからだろうか?
動揺、しているからだろうか?
「皇紀、さん?」
「朱希、やめておけ。」
彼の名前を呼んだだけだった。
何かが彼の中で分かっていたのかもしれない。
彼はそう言った後に、目を閉じたまま、僕に言った。
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