第84話

朱希SIDE




関西の方にはホテルを取っていたと言っていたのに、何故かもう九州の方に帰っていた。




その理由が知りたいのだけど、口を閉ざしている僕には今それを聞く勇気はない。



それよりも、今は彼女のことで頭がいっぱいだ。



心も、すべて、いっぱいだ。




最後の彼女の言葉が、忘れられない。




『あなたにとってそれが馬鹿でも、私にとって馬鹿じゃない―――…ただ、それだけ』



どうして、そんな綺麗なことが言えるんだろう?



どうして、何も迷わないその瞳で言えるんだろう?




コツン、と僕は車の窓で頭を当てる。




その音が車の中で響いたのかとか、皇紀さんに聞こえたのかとかそんなことはどうでもいい。

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