第55話

いつもよりあまり食べなかったので、今日は精神的に疲れているのかもしれない。



ああ、とりあえず早く向こうに行って普通の生活を送りたい。




そう思って、黒のワイシャツを着て、ボタンを留めている時に、手が止まった。



三つ目のボタンを留めようとしているときに、止まった。






いや、間違えた。



あっちは普通の生活じゃ、ないよ。



特殊で、私が自由に生きられる時間だ。





普通の生活は、こっちなんだ。



だって私は『佐藤組』の一人娘で、こっち側の人間なんだもの。



今の生活は、私の気まぐれなんだ。





ボタンを留めていた手を、下す。



無意識に、下す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る