第35話

「真野…か。」



格段と驚いた様子もなく、ただ力なくオレにそう言った。



彼の目には何も映っていないような、そんな感じがした。



何かを後悔してしまい、それが戻ることはないと分かっているような目。






それはただ端にオレの勘でしかないけど、そうだと思った。



こんな目をした人をオレは見たことがあるから────








自分でも、そんな目をしたことがあるから────





泣きそうになるのを必死に抑えた。



辛いのがオレではないのに、泣けるワケがないから。






「こ、こんな所で…何やってんの?」



オレは泣く代わりに、そう当夜に言った。



当夜はそれを聞いた後に、少しだけ瞳を揺らした。

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