第82話

泣きながら途切れ途切れに壱はそう言うと、うわ言のように麟太郎に謝り続ける。



「俺は、壱の親父が死んだあの日のことをあまり覚えていなかった。壱から親父が殺したって聞いて、それが真実でも真実じゃなかろうと……お前の親父は俺を庇って死んだ。恨まれても仕方ないと、死んでもいいって……思ってた。だから、もう全部どうでも良かった。いっそ、お前に殺されようと思った。」



壱の前に膝をつき、項垂れて話す麟太郎にさっき話した事件の真実を話して聞かせた。

麟太郎もユウジも信じられないと風に驚いている。



『殺されようとって、やっぱ楽になりたかっただけじゃん。お前を守って亡くなった壱の親父の命が重くなったか?』



「重い。背負いきれない。一人の命も背負えないのに、組を継げるわけない!」



いつも無表情の麟太郎の表情が歪み、目からは雫を落とした。

地面にポタポタとシミを作る。

麟太郎のその姿に、ユウジと桃里も困惑しながらも麟太郎と壱に寄り添うように肩に手をおく。



『甘えんな。命が重いのは当たり前だ。お前は強くならないといけない。壱の親父が守ったのは組の未来だ。守ってもらったお前には、それを背負う義務がある。お前には、心配してくれる仲間もこれから一緒に背負ってくれる兄弟もいるじゃねぇか。周り見ろよ、ばーか。』



麟太郎の頭をぐしゃぐしゃと撫で、一発叩いてやった。



『ケツ叩いてやったから、僕の気はすんだわー。後は自分等で話し合えよ。』



「ああ……ありがとう、紺。」



屋上を出ていこうとする私たちに、麟太郎はそう言って笑っていた。

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