第10話

孫娘を脅す祖父は、母が日本に戻る一週間は家族三人の時間を過ごすようにと言った。

それから一週間、懐かしくて本当に夢のような幸福感溢れる時間を過ごした。

そして、今日が最後の日。

明日母は外国へ向かい、私は祖父の元へ行く。



「紺、パパはやっぱり反対だ。」



『父よ、私が決めたことだ。』



「脅しじゃないか!それに、お義父さんらしくねぇし……。」



私は祖父がどんな人かは知らない。

私にとっては孫を脅すくそ野郎としか思っていない。



「やっぱり私が、」



『母。私は二人が大好きだよ。仕事に誇りを持っている、夢を追い続ける二人が私の自慢なんだ。お願いだから、やめたりしないで。私なら大丈夫。なんてったって、二人の娘だからね。』



一度決めたら父のいうことでもテコとして動かない私のことを両親はよく分かっている。

これ以上言っても無駄と分かっていても、二人の顔は納得はしていない。



祖父は取り敢えず高校三年間で私の資質とやらを試すと言った。

母は静かに大人しく過ごせと私に鼻息荒く言った。

平凡、もっと言えば何も出来なければ、祖父は諦めるだろうとのことだ。



『言われなくても私、平々凡々何の取り柄もないちょっと短気な女の子だぞ?』



「平々凡々の子はお母さんに果物ナイフ投げない。机にフォークを刺したりしない。ちょっとじゃない。凄く短気。お父さんに銃刀法違反で逮捕されちゃうぞ?」



「何の取り柄もない子は強運でもなければ記憶力も異常に良くないし、運動神経も学力も常にトップじゃない。街を歩けばスカウトされたりしない。」



『……ナニイッテルカワカラナーイ。』



肩を竦めて見せると、二人揃って呆れた顔をして私を見た。

そんなことを話していた翌日、朝早く我が家のインターンホンが鳴った。



「お義父さん……」



インターンホンのカメラに移った怪しい男。

変装をしているらしいソイツは祖父らしい。



『あ?胸糞爺なら居留守しようぜ。』



「紺ちゃーん!じいじが迎えに来たよー!あと丸々聞こえてるよー!」



よくもまあ脅した相手にケロッと明るい態度が取れるもんだな。

父は祖父を招き入れると、母が祖父に向かってクッションを投げ付けたが祖父は簡単にそれをキャッチした。

祖父の後ろからこれまた変装しているのであろう黒髪長身痩躯のサングラスをかけたチャラい男と、スキンヘッドの大男が現れた。



「帰れー!まだ家族水入らずの時間なんだから!」



「拗ねてるの?アオのお見送りも忘れてないぞ!また暫く会えなくなってしまうから、顔くらい見てもいいだろう?僕もこれから仕事だから。」



「紺に危ないことさせたら、“あれ”するからね……。」



「はいはい。僕に可愛い孫娘を任せて。」



「お義父さん、紺は頑固だから一度決めたら絶対に曲げません。だから、紺に何かあったら例えどんな手を使ってもあなたを赦しませんよ。」



「怖い怖い。優秀すぎる息子には困ったものだ。」



……ああ、私は幸せ者だ。



私を大切にしてくれる家族がいる。

胸の奥にじんわりと温かいものが広がって少しだけでこそばゆい。

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