第5話

祖父と机を挟んだ向かい側の床に座り、祖父の次の言葉を待つ。

母はいつの間にかキッチンに行っていて、祖父にアイスティーを持ってきた。



「紺はアオの家のことをちゃんと知っているんだね。」



『まあ……指定暴力団柳組組長、柳勲。』



母、柳青伊は謂わば極道の一人娘。

そして父、八雲黒斗は一家全員エリート警察一家の次男。

二人がいくら愛し合っていようとも戸籍上二人は赤の他人で、私はその二人の正真正銘血の繋がった一人娘。



「本当はもっと紺とおしゃべりしたり、デートしたりして口説きたかったんだが……」



『年齢差きっついっすわ。』



「地味に傷付く……」



「父さん、早くして?これから紺とショッピングモール行くんだから!」



母に肩を殴られて、祖父は困ったように笑った。



「分かった分かった。……紺は将来の夢はあるか?」



『いえ、特にないですね。』



私が憧れるのは父。

警察官として仕事に誇りを持っている父を尊敬しているが、だからと言って父のように警察官になりたいわけではない。

決してそれは、母の実家を意識しているからではない。



私の言葉を聞いて、さっきまでの優しい祖父の微笑みは消えて瞳を鋭くして私を射抜く。

次に祖父の口から出てきたのは、私の予想を上回る






──人生を180度変える一言だった。

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