第3話

なんてことはない日曜日の正午。

約三年間過ごした国を母と共に出発した私、八雲紺やぐも こんは父が暮らす日本に帰って来た。

長いフライトが終わり、母は大きく伸びをして上機嫌に迎えに来てくれているであろう父を探す。



「クロさんは!?クロさーん!!」



『母、年甲斐もなくはしゃがないで。』



「紺ちゃんレディーに年齢の話はダメでしょー?。」



そう言って私の米神を握り拳でグリグリと抉る。

自称慎ましく淑やかな母は、実年齢よりもだいぶ若く見られがちでよく二人で歩いていると姉妹に間違われる。

しかも私が姉という……母が超童顔のせいで。

そんな愛らしい母は実は女ながらに不良のヘッドで、今でもその時の仲間たちと仲がいいらしい。



「紺、アオ!おかえり!」



「クロさぁぁああんっっ!!!」



『父、ただいま。』



「紺ちゃん、パパって呼んでってば……」



抱き着いた母を優しく包み込んだ父の黒斗くろとは私を見て眉を下げてそんなことを宣う。

眉を下げていくら悲しそうな顔をしようと、ワイルド系の悪人顔ではちっとも心揺すぶられることはない。



今父が暮らしているのは三年前に住んでいた街ではなく、父が仕事の部署移動で二年前に来た新しい街。

そうは言っても母の実家がある街でもある。



タクシー乗り場で家族三人仲良く車に乗り込み、イチャつく万年バカップルの会話をシャットダウン。

流れる景色に目を向けてゆっくりと目蓋を閉じた。

思い出すのは、一ヶ月前のある日のこと───。

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