第25話
拝啓、親愛なる父と母。
先日我が家に新しい家族が増えました。
名を“ダル”と言います。
私の部屋で同居するフレンチブルドッグの子犬です。
白、よりも少し茶色っぽいクリーム系の毛をしています。
チャームポイントは耳の先っぽだけ毛が黒いところとうるうるしている瞳です。
四六時中寝転がり涎を垂らしているのです。
おまけに頬を床につけたまま前進するだらけっぷり。
しかしこのダル、動物に好かれないで定評がある私にも従順に懐いています。
人懐っこくて風呂も嫌がらずトイレもすぐに覚えました。
「おて」「お座り」「待て」も完璧です。
今は一発芸も何個か仕込んでいます。
散歩と骨のおもちゃがお気に入りのようです。
そして、部屋でも私のことを大きな瞳で追って、学校の見送りと出迎えもしてくれるのです。
私がいない間は縁側で日向ぼっこか部屋で昼寝、それか休みの組員と遊んでもらっているようです。
他の強面家族も破顔して可愛がっています。
そして本日、絶好の体育祭日和。
私はおにぎりさんのせいで面倒な生徒会執行部なるものに入れられ、準備に終われる日々を過ごしました。
愛する両親、どうか私を応援してくてください。
『敬具。』
PS.この前から錦の様子が可笑しいのです。私を凝視しては目が合うと胸を押さえる。
「「だからそれなに!!」」
「紺ちゃんはたまにトリップするな~。ちゃんと帽子被らんとお日様で殺られてまうで。」
『それは僕の頭がお日様に殺られてるっていいてーのか?錦?』
喋ってる分には普通なんだけど、時々挙動不審になったりかと思えば何か言いたげに口を開いてやめる。
「怖いわー。」
「二人とも漢字が違う気がする。」
体育祭は運動競技場のグラウンドを借りて行われる。
会場設営、機材は教師陣が担当。
そして、私たち生徒会執行部の役割は───
「あ!?てめぇガン飛ばしてんじゃねーよ!?」
「あ”ぁん!?そりゃてめーだろうが!!」
「やんのか?」
『ああ、殺るか。』
「「ヒッ!!」」
争うソフトモヒカンと金髪の間に立ち、低い声を出すと仲良く四方に逃げていった。
『何故逃げる……』
「喧嘩仲裁出来てるからいいんじゃない?」
そう、私たちの役割はこの体育祭を問題なく慎ましく執り行うこと。
その為に生徒同士の喧嘩の仲裁や、外部との争いがないか注意すること。
本来、進行も私たちの仕事だったが、それは揚羽蝶のトップスリーにお願いした。
ららが大吉に申し出てくれた。
『お前いいな、優しい彼女もって。』
「えへへ」
「『うざ』」
「僻みはあかん。あ、こんにちはー。」
教師たちは出欠を取り、理事長の元へ戻っていく。
私たちは今、保護者や友人と思われるお客さんたちを席へと誘導している最中。
「今日誰か来んのかなー。錦のところは?親父さんのことだから絶対誰か送ってくるだろ。」
「……
そういえば、文化祭にも来てたな。
あの時は丁度こっちに組の用事で来てたから寄っただけみたいだった。
「日和さんかー会うの久々だ!」
『日和さんって?』
「錦の世話役してた人。なんか独特の間がある人なんだよね。」
「はぁ……」
錦は肩を落としていて、来られるのが嫌みたいだった。
うちも母が来たがったが、あの人が来たら“柳”の娘ってバレる。
この学校には色んな組の子供が多くいる。
その保護者が来るのだから、母の顔はバレていても可笑しくない。
そして父の顔も。
なんとなく椿を誘ってみたが、曖昧に返されて終わった。
それから光くん、晃、和志が来たがってたけど、一体誰が来るのかな。
光くんは来ないだろうなー。
ぼんやりと来そうな人を想像しながら 誘導していると、双子が揃いも揃って「げっ」と声を上げた。
「父親を見てげっ、とは?」
「『みくじさん!』」
「「ヒィッ!」」
逃げ腰の双子が同時に一歩下がると、ドンッと誰かの胸板に当たる。
「あ、晃くん。」
「シンクロ双子してんじゃん。」
「なにそれ。」
おお、まさかみくじさんと晃が来るとは!
やはり多忙であっても双子の父親。息子の勇姿は見たいよねー。
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