第20話
ベッドサイドにおいた砂もついていなかった紅葉の葉を手に取る。
「光くん!?」
『神社見てくる!』
「ちょっと待ってー!!」
施設長の声を無視して全力で駆けた。
息を切らしながら階段を登って着いた神社は薄暗くて、人影はない。
『チビーっ!チビいるかー!?』
「っ!!お、お兄ちゃっ……っ!!!」
神社の裏から、チビの声がたしかに聞こえた。
急いで声のした方へと行くと、数人の厳つい黒服の男がぐったりしているチビを担いで車に向かっていた。
『っ!!チビを離せ!!』
「そのガキ始末しておけ。」
「へい。」
男が三人俺に向き直り、臨戦態勢を取る。
相手をしていたら、チビが連れ拐われてしまう。
『チッ……クソが』
一人を殴り飛ばし、もう一人を相手していると後ろから三人目の男が俺の脇に腕を入れて持ち上げる。
強い。一人一人が重い。
「ガキが舐めやがって……おらっ!!」
ガッ、と頬に衝撃が来て口の中に鉄臭くてドロッとしたものが溢れる。
歯がいっちまったか。
「おい待て。」
「田中さん?」
「こいつ可愛い顔してんじゃん。見られちまったしなぁ?あの光ってガキと一緒に売るか。」
……ひかる?
『ゲホッ……ゴホッ……』
アイツは光──俺と間違えられてこんな目に?
口の中の血のせいで喋りにくい。
顎の感覚が重くて、口が動かない。
「お前くらいの歳の奴は丁度いいんだよ。すぐに人気者だ。」
『っ……チビ、を……かえせ……』
「あのガキは親の借金のカタだ。しょうもねぇ父親と母親が蒸発したせいで、哀れだよなぁ?お前も手伝ってやれよ。」
男たちの下品な声に、歯軋りをして睨み拘束から逃れようと暴れた。
アイツは関係ないのに俺のせいで……!
目の前の男の腹を蹴ったが、男はびくともしない。
蹴られた男は舌打ちをすると、黒い塊を重い音をさせて俺の顎に刺した。
「眠らせろ。騒がれたら面倒だ。」
「うっす。」
もう駄目か……と諦めそうになったその時、俺の体が地面に落ちる。
『っ……!?』
「なんだっ……がっ!!」
「返してもらう。」
『っ……な、で?』
なんでアンタがいるんだよ。
「警察だ。お前たちは囲まれている。てめぇらのボスも捕まえた。諦めて子供を離せ。」
「サツがなんでっ……!!」
チビを乗せた車にも、俺を捕まえていた男たちにもスーツと制服の警察官たちが拳銃を持って囲んでいた。
俺に拳銃を突きつけていた男は手を上げ、そいつが拳銃を地面に置いた瞬間、男たちは取り押さえられた。
俺に駆け寄るその人を最後に俺の意識は途絶えた─────。
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