第5話

病院までの間、生きた心地がしなかった。

ただただ父の無事を祈ることしかできない不甲斐なさ。



車が止まったのは小さな町の病院。

車が停車した瞬間、獅子さんの声も無視して中に入った。

待合室に入って、声がする部屋に走った。



「ん?こんな遅くに……」



『父!!』



唯一光が漏れていた部屋の扉を開けると、父の年齢と同じくらいの白衣のひょろ長い男が振り返る。

無精髭を生やしたその人は、私を見ると頭をガシガシと掻いてから溜め息を吐く。

男が一歩横にずれると、そこには───



「おう、紺か。病院は静かにしなさい。」



『……へ?』



ベッドで寝ている重体の父……ではなく、ダンベルを持っている父の姿。

想像していた姿じゃないことに安心して、膝から力が抜ける。



そんな私を動揺している父が駆け寄って持ち上げる。



『っ!!お、下ろして!!撃たれたんじゃないの!?すっごく心配したんだよ!?』



「ああ、この通り問題ない。心配してくれてありがとう。」



「この子がお前の娘の……グレーちゃん?」



「『紺です。』」



「そかそかー。グレーちゃん、落ち着いて聞け。」



誰がグレーじゃ。

まあグレーっちゃグレーなんだけど。



医者の学校のその男は神妙な面持ちで私の肩を掴む。

その真剣な表情に唾を飲んで次の言葉を待つ。



「お前の父ちゃん地球人じゃねーよ。自力で傷口塞ぐ細胞ってお前やっぱ昔からチートだわ。一回体研究所に預けて調べてもらえ。同じ人間じゃない。」



「弾が貫通したから良かった。相変わらずお前は面白いな。日頃鍛えていれば誰だって出来る。腕の動きも肩の回転にも支障はない。戻って始末書を書かねば。」



「鍛えてどうにかなるなら死人はでねーよ?鎮痛剤打ったから痛みないだけ。今晩は絶対安静。これ主治医の命令。それじゃ。」



主治医の先生が出ていくと、父はベッドに私を座らせてその隣に自分も腰を下ろした。



「紺?ごめんな。お前に心配かけて。」



『っ……うっ……ひっ……うわあぁぁぁぁんっっ!!!』



ずっと堪えていたが、ついに涙腺が決壊してしまった。

父に抱き締められてポンポンと背中を擦られた。



落ち着くまで暫く時間がかかった。

ぐずぐずと鼻水を啜る私の鼻に父がティッシュを当てて「はい、ちーん」と言う。

思い切りかんでやったとも。

ティッシュから鼻水が伸びるくらいに。

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