姉弟

第23話

透の呼び止める声が聞こえる。

でも、走り出した足は止まってはくれない。



遠くから見ただけだが、二人は大きくなってて、世に言うイケメンに育っていた。

久しぶりに会えたことが嬉しすぎて、感極まって泣いてしまいそうになった。

まさか自分が、と思う。



私と同じ色のふわふわの髪、私はカラコンで隠しているがお揃いの瞳の色。

心臓が軋むくらい大きく鳴って暴れまわっている。



……今更怖いなんて、最悪。



───「ぶつかってこいよ。受け止めてやるから、な?」



そんなのアンタくらいだよ……ルイ。



「待て!」



『へ?……っ!!』



後ろから追いかけられる人間の私と、追いかけてくる巨人が二人。

そしてその後ろに巨人を追う女の群れ。



二人は私を逃がしてはくれないらしい。



───こうして、ドキドキ校内恐怖の鬼ごっこタイムが始まったのだ。




────

──



鬼ごっこは、足の速さや状況判断が勝敗を大きく変える。

特に状況判断は、その場の地形をどれだけ把握しているかにもかかっている。



そして、そこに関しては転校生の私にはハンデが大きすぎるのだ。

彼らは一度いなくなり、諦めたのかと思ったが油断して教室に向かおうとする私の背後に忍び寄っていた。

女の群れを撒いて。



『まじか……』



私は今、脚力だけで彼らと対峙していた。



「紫苑っ!!待て!」



低く地を這う声にビビり、走る速度をあげた。

そして、人がいない空き教室に逃げ込み鍵を閉め、息を潜める。



「……ここだ。」



鍵が開かないことを確かめた彼等は、あろうことかドアを蹴破ろうと体当たりを始めたのだ。



『まじかー』



二階……なら飛べるか。

頼むから、心の準備をさせてくれ。



ドアが嫌な音をたて始め、蹴破られた瞬間に窓から飛び降りた。

そして、愚かな櫻小路紫苑は手ぶらで家に帰ったのだった。



「馬鹿ね。」



『はい……反論の言葉もございません。』



「それにしても、あの二人がそこまでしてアンタを捕まえようとするとは思わなかったわ。なにしたの。」



『……追いかけられると逃げたくなる。それが本能と言うやつよ。』



「馬鹿ね。」



私の荷物を持ってきてくれた透を部屋に通し、ペットボトルのお水でもてなした。



「そういえば、名字が一緒ってことは……親族なんでしょ。いつかはバレるんだから早く言って。」



『……んーまあ、姉弟。』



「は?」



『三つ子なの。』



真ん中の帝と末っ子の杏璃。



「……それじゃあ、なんで逃げるのよ。」



『怒られるの怖いじゃん?』



「殺される勢いだったものね。」



『ねー。』



これから、毎日のように鬼ごっこが始まったらどうしよう。

いや、利口な彼等のことだから教室に待ち伏せしてそうだ。

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