第168話



審判の生徒と周りの生徒の兄貴に対する色目が気に入らない俺は、ブスッとした顔をしていた。

そんな俺の頬に手を添える。



「何拗ねてんだ?……可愛いだけだぞ。」



そんな恥ずかしい台詞をさらっと言われると、言われた俺の方が恥ずかしくなる。

それに可愛くないし。

これが所謂イケボというやつなのか、低く甘い声で話しかけてくる。



照れ隠しのつもりでぎゅっと抱きついて、兄貴のお腹に頭をぐりぐりと押し付ける。



『……うー』



「くっくっくっ」



よしよしと再度俺の頭を撫でる。

顔を上げると目の前に兄貴の笑顔があった。



「仁」



俺の背中に腕を回すとぎゅっと強い力で抱き締められた。



「「「「「きゃあぁぁぁっ!」」」」」



何?何かあったの?

俺が兄貴に抱きついてる間にも、競技は続いている。

兄貴から少し離れて周りを見渡すと、顔を赤くした生徒がたくさんいた。

中には鼻血を出して倒れる生徒もいる。

そして何故か目が合う。

俺たちが見られてるの?



「じーんーっ!」



姫の声が聞こえてそちらを見ると、怒ってらっしゃる。

な、なんで?怖いんだけど。

般若とまでは行かないが、黒い。

何故か龍ちゃんや虎くんも黒い。

洸雅がお腹を抱えて爆笑している。

ひなちゃんたちは、顔を赤くして目を見開いて此方を見ている。



なんともカオスな状態になっている観覧席。



「仁、俺たちが立ってるからじゃないかな。座ろっか。」



兄貴に促されて、消火器の隣に座る緑川と灰原の元へ行く。



「きょ、恭さん!こんにちは!」



「恭さん、こんにちは。」



緑川と灰原が立ち上がると兄貴に向かって頭を下げた。

しかし、その表情は酷く困惑しているのが分かる。



「二人とも、こんにちは。亮太はおめでとう。」



「あ、ありがとうございますっ!」



兄貴に誉められて、嬉しそうに笑う緑川。

ん?なんか親しくないか?



「本当に恭さんは、そいつと兄弟なんですか?」



「うん、そうだよ。」



兄貴の肯定を聞いて、目を見開く灰原と口を開けたままの緑川。

可愛い顔が間抜けな感じになっている。



「恭さんって、弟いたんですね!妹さんの話は聞いていましたが……」



「え?……あー、後で説明するよ。ここだと、ね?」



話を聞いていたってことは、兄貴と知り合いなのか。

どこで知り合ったんだろ?



『兄貴』



「仁にも後でね。」



子供に言い聞かせるようにポンポンと優しく撫でられる。





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