幼馴染み

第50話



《仁side》



姫と理事長室の前に到着してドアをノックする。

少しして内から秘書と思われる人が開けてくれた。



「はい。どうぞお入り下さい。」



「失礼します!」



『……失礼しま』



『す』まで言えなかった。

その理由は、何故か男に抱擁されているからだ。



いきなり、なんだよ。

目の前はスーツしか見えなくて、顔が分からない。

でも、何故だろう。

安心するこの匂いって……。



「仁、入学おめでとう。」



……ああ、やっぱり。この声。



俺も男に抱きつく。

身体をぴったりとくっ付けると、男はさっきよりも腕の力を強くした

そうしていたのは、数十秒程度だったと思う。

俺が腕の力を緩めると男も腕の力を緩める。

少し上を向くと、すぐ近くに整った顔。

その顔は、ほんの少しだけ兄貴に似ている。

にこやかな笑顔があり、目からも優しさが伝わってくる。

あまりにも嬉しくて、自然と頬が緩む。




『……久しぶり



















叔父さん。』



俺の伯父さん───有栖川 秀(ありすがわ しゅう)

父の弟で、俺と兄貴を引き取ってくれた恩人でもある。

清潔感もあり、モデルのように整った容姿は40代には見えない。

性格は優しく、穏やかで何でも出来る天才。

完璧で紳士な叔父さんは、独身だ。



「ああ。元気そうで良かった。少し見ない間に大きくなったな。……留守にすることが多くてすまない。」



そういうと、俺の頭を優しく撫でる。

すごく落ち着く。



『ん……叔父さんも元気そうで良かった。……会いたかった。』



「俺も。会いたかったよ。相変わらず可愛いな。」



さっきまで頭の上にあった手は、下に降りてきて、俺の頬を包む。



「秀様、仁様。再会はそのくらいで、姫乃様がお待ちです。」



「……ああ。姫ちゃん、すまないね。さあ、二人とも座ってくれ。」



俺を離すと、ソファーにエスコートしてくれる。

ソファーに座ると、身体が沈む。



上下に動くと、ぽよぽよと柔らかい。

隣に座る姫に笑われる。

姫だけじゃない、叔父さんと秘書さんにまで笑われた。



「クスッ……私は秀様の秘書をしております、紫崎 吏王(しざき りおう)と申します。仁様、姫乃様。お二人のことは秀様からよく聞いております。以後お見知りおきを。」



『…………どうも。』



紫崎ってもしかして……?



「紫崎さんって、この学校にお子さんいらっしゃいますか?」



姫も同じことを思ったようで、聞いてくれた。




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