第85話

……認めたく、なかった。



これは大稀じゃねえと、どこかで否定したかったのだ。



分かっていたはずなのに。




彼に触れた時、手の温もりと大きさ―――…全てが大稀だと語っていたのに。




認めたくなんて、なかった。



俺の憧れという理想を壊したくなくて、こんなに腑抜けになった大稀を認めたくなくて。






俺がこんな風に触れて泣きついたら、大稀はいつも『そんなんで泣くんじゃねえ』って怒っていたのに。



……何で今は、ただ俺の頭を優しく撫でるだけなんだ?



―――…こんな腑抜けた大稀に会いたいわけじゃなかった。



誰も、こんな大稀に会いたいわけじゃなかったのに。





「ふざけるな…っ!!」

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