第66話

どうやら、喧嘩をしているような様子ではないらしい。



―――…残骸がない、とは言い難いものではあるけれど。





それでも酷い醜態というわけでもないし、怪我もしていないようなので安心はした。



でも、声をかけるのにしばらく時間はかかる。



―――…どう、声をかけたらいいのか、分からない。



率直に言えばそういうことではあるが、こんなに静かで何かに落ち込んでいる彼を見るのは初めてで――…声をかけていいのかすら、分からないのだ。






砦。



そう名前を呼びたいのに、名前すらこの口から出て行こうとしない。



酷く傷ついているあなたに声をかけたいのに、声をかけられない私は何って臆病なのだろう。

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